後立山(長野) 布引山(2683m)、鹿島槍ヶ岳南峰(2889.2m) 2022年11月12日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 2:32 大谷原−−3:29 西俣出会−−4:57 高千穂平(標識)−−6:10 冷乗越(県境稜線)−−6:20 冷池山荘−−6:28 テント場−−7:07 布引山−−7:43 鹿島槍ヶ岳南峰 8:48−−8:51 アイゼン忘れに気付き山頂に逆戻り−−8:57 鹿島槍ヶ岳南峰(アイゼン回収)−−9:04 ザック回収−−9:21 布引山−−9:46 テント場−−9:49 冷池山荘−−10:00 冷乗越−−10:35 高千穂平(標識)−−11:12 西俣出会−−11:50 大谷原

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日22022年11月12日 日帰り
天候快晴
山行種類ほぼ一般登山
交通手段マイカー
駐車場大谷原に駐車場あり。今年は橋を渡った対岸の駐車場も利用可能だがそれを知らない登山者が多い
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無赤岩尾根最上部のガレは雪に覆われアイゼン、ピッケル使用が望ましい。今回は私が最初の登山者だったのでラッセルしてトレースを付けた
山頂の展望晴れれば大展望
GPSトラックログ
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コメントまさかの11月半ばに鹿島槍ヶ岳へ登れてしまった。気温は高めで風も弱く、今週は雨も降らなかったのでそれ以前の降雪は北斜面以外はほぼ消えてしまい、ほとんど夏道を歩いた。下山中にすれ違った登り登山者は計5人だけで静かな山行だった


布引山から見た鹿島槍。11月中旬なのにこの雪の無さは記録的ではなかろうか。まだ半袖で歩けた。


午前2時半過ぎに出発 堰堤のトンネル
標高1960m付近 高千穂平の標識がある2045m峰
大町市街地の夜景 白樺平(2278m肩)。標識は撤去済み
午前6時前。東の空が明るくなり始める 赤岩尾根上部のガレ その1
ラッセルしながら慎重に進む 赤岩尾根上部のガレ その2。その1より安全
もうピッケルの出番は無いのでハイマツの中に隠す 冷乗越。風が冷たい
今年の営業を終えた冷池山荘 冷池は凍っていた
玄関屋根を支える柱 6時半前に雲から太陽が顔を出す
テント場。さすがに誰もいない
稜線東側にも雪無し カモシカの足跡。地面は凍っている
森林限界突破 布引山
鹿島槍の影 稜線直上に僅かに雪が残る。固く締まって滑りやすい
最後の登りは雪無し 鹿島槍ヶ岳山頂(南峰)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た東半分の展望(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た西半分の展望(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た越後三山、尾瀬、奥日光の山々(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た常念山脈、槍穂
鹿島槍ヶ岳南峰から見た槍穂。右手に僅かに乗鞍岳が顔を出している
鹿島槍ヶ岳南峰から見た裏銀座、薬師岳
鹿島槍ヶ岳南峰から見た北信の山々
鹿島槍ヶ岳南峰から見た苗場山と尾瀬の山々
鹿島槍ヶ岳南峰から見た奥日光の山々
南峰〜北峰間稜線。小さいながら早くも雪庇ができている 鹿島槍ヶ岳南峰から見たキレット小屋
鹿島槍ヶ岳南峰から見た白馬岳周辺 鹿島槍ヶ岳南峰から見た白馬岳拡大
鹿島槍ヶ岳南峰から見た剱岳 鹿島槍ヶ岳南峰から見た水晶岳と針ノ木岳
鹿島槍ヶ岳南峰から見た種池山荘 鹿島槍ヶ岳南峰から見た冷池山荘
鹿島槍ヶ岳南峰から見た八方池山荘 上空を飛んでいた飛行機
鹿島槍ヶ岳南峰から見た富山平野 北峰へはトレース無し
山頂に忘れたアイゼン アイゼン探しでデポしたザック
布引山直下 最初にすれ違った男性
3番目にすれ違った男女 テント場から見た立山、剱岳
冷乗越への登り返し 冷乗越
冷乗越から見た西〜北〜東の展望
赤岩尾根ルートの足跡 デポしたピッケルを回収
上部トラバースのトレースは濃くなっていた 下部トラバース
白樺平 高千穂平の標識がある2045m峰
2045m峰西側広場から見た鹿島槍ヶ岳
標高1960m付近 遭難慰霊レリーフ
階段の手すりは取り外してあった トンネルのある西俣出合の堰堤
西俣出合から見た鹿島槍ヶ岳 林道終点に一株だけ咲き残ったコゴメグサ
発電用取水堰は工事中 工事車両が入っているのでゲートが開いて鎖がかかる
冷池山荘は冬季小屋あり 駐車場到着。私の車を含め計4台あったが全部登山者?


 先週末は好天だったのに文化の日に引いてしまった風邪のおかげで金土日曜日は寝て過ごす羽目になったが、今週末は体調は完全回復し万全。あれから天候が大きく崩れることは無く、長野盆地から見る白かった後立山の山々はほとんど雪が消えてしまった。盆地から見えない北斜面には当然ながら雪が残っているだろうが、南斜面には雪はほとんど無いだろう。おまけに週末は土曜日は丸一日好天予報で気温も高め。今シーズン最後となるかもしれない北アルプスに上がるには絶好の条件が揃っていた。

 これだけ雪が無く長時間の行動が可能な天候と言うことで、今後の積雪が一気に増える可能性が高く行動時間が長い山ということで鹿島槍を選択した。おそらく例年の今頃では鹿島槍を目指すにはラッセルが必要な積雪のはずである。今後、冬型の気圧配置が来ればすぐに雪が増えるだろう。なお、今回は南峰までとして北峰はパスすることに。南峰から北峰に向かう途中、最後に水平の尾根に乗り移る直前の岩場に半端な雪があるとアイゼンが効かずに下降困難であるからだ。逆に雪がたっぷりついていた方が安全な場所である。

 ネットの予報では鹿島槍ヶ岳の標高3000mの気温は午前8時で-1℃、風速は5m/sとこの時期にしては気温が高く穏やかだ。これなら稜線で長時間風に吹かれる今回のコースでも問題なかろう。

 ルートはいつもの赤岩尾根だが懸念がある。赤岩尾根最上部のガレのトラバースは北斜面であり雪が付いているのは確実。今回のルートで唯一の危険地帯と予想され、ここの危険度がどの程度かの見極めが肝心だ。長野市から見る限りではそれほど積雪量は多くは無いと予想され雪崩の心配があるほどではなさそうだが、逆に雪が少なくて半端に残った雪が日中に溶けて夜間に凍結していると厄介だろう。事前にネットで最近の赤岩尾根の記録を探したが、直近の記録は10月30日で約2週間前の状況。この記録では岩場に軽く雪が乗った状態で凍結は無し。これよりは厳しいと思うが、おそらく凍結ではなく新雪の積雪の可能性が高そうだ。アイゼンは6本爪の軽アイゼンとし、迷ったが念のために軽ピッケルを持つことにした。これらを使うのはおそらく赤岩尾根上部だけであろう。

 金曜夜の大谷原駐車場に車は皆無。もう冷池山荘は今年の営業を終わっているので当然だろう。11月の鹿島槍に赤岩尾根から登ろうと考えるのは一般登山者とは言えないだろうし。これが燕岳ならずっと人数が多いのだろう。左岸側駐車場で酒を飲んで就寝。山頂到着は午前8時とし、夏山シーズンなら約5時間の所要時間は荷物の重さ、赤岩尾根上部の危険地帯通過の時間やその後の若干の積雪を考慮して5時間半を見込んで午前2時半に出発した。当然ながらこんな時期にこんな時間に歩いている登山者皆無だし、駐車場の車もまだ私1台だけで、他に登山者が来るのかも分からない状態だった。天気は快晴で満天の星空に明るい月。

 金曜日の仕事は肉体労働だったので出発から足がやや重いのが思いやられるが、今回は南峰までなので時間がかかってもいい。林道は一面の落ち葉で路面の石が見えないので歩きにくい。こんな場所で足首を捻挫してリタイヤなんてことにならないよう歩行速度を落とす。こんな時はライトが照らす狭い範囲の光では歩きにくい。出発時は長袖シャツとウィンドブレーカを着ていたが、林道は緩やかな登りで終点までに標高差約300mを登るので途中で体が温まっていつもの半袖姿に。気温はこの時期にしては明らかに高かった。

 林道終点から堰堤のトンネルを潜って赤岩尾根に取り付く。林道歩きでは足の重さが気になっていたが、尾根の急登にかかると調子が戻ってきた。しかし無理はせずにややペースを落とし気味に上がっていく。尾根下部はどういうわけか登山道上の落ち葉や石が濡れて滑りやすかったが、少し高度を上げると乾燥していた。でも頭上が開けた場所では石の上に霜が降りていて滑りやすい。以降、木や鉄の階段にも霜が降りていてイヤらしかった。しかし標高が上がっているのに気温は途中から明らかに上がったのが体感でき、晴れて放射冷却で冷えた空気が盆地に溜まっていたのだろう。

 北斜面で雪が見られるようになったのは標高2000m弱から上部であるが、尾根直上に移ると再び雪は消えた。高千穂平の標識がある標高2045m峰で樹林が大きく開け、大町市街地の夜景の光が見えていた。しかし長野方面の遠い光は霞んでいて、思ったよりも空気の透明度が良くないような。今日は奥日光の山々が見えるか心配になる。

 2045m峰以上は森林限界の様相が濃くなり、風も感じられるようになってネックウォーマーとウィンドブレーカを着用。上方の爺ヶ岳北峰の斜面はかなり白く見えているが、鹿島槍方面の稜線にはほとんど雪は無い。まだライトが必要であるが東の空は赤くなり始めていた。

 標高2100mを越えると少しの日陰でも雪が残るようになるが、その上には足跡は無い。しかし靴底がすり減った私の登山靴では登りでも滑りやすくコケないよう注意が必要。2278m肩には白樺平の標識がかかっているのだが、冷池山荘の営業終了と共に標識を撤収したらしく無くなっていた。ここからは山頂までの県境稜線が見通せるが、登山者のライトの光は皆無であった。

 標高2350mの尾根北側に回り込む地点で軽アイゼンを装着し軽ピッケルを手に持つ。既に周囲はライト不要な明るさになっていて、最もリスクが高いガレのトラバースはライト不要で通過できそうで一安心だ。積雪の上には小動物の足跡が多数あったが人の足跡は無かったので、前回の積雪後に入山者はいなかったようだ。

 肝心のガレのトラバースであるが、新雪が積もっているので岩の上が凍結しているのかは不明なためアイゼンは必要だろう。登山道以外は僅かに斜面が白くなっている程度で絶対的な積雪量は数cm程度だが、登山道上は吹き溜まって多いところで20cm程度あるのでラッセルだ。ただし雪はフカフカなので足への負担は少ないが、足元の雪が崩れやすいので要注意だ。念のためにピッケルを持ってきたが、積雪が少なすぎてピッケルが効くような場所が無く、岩を掴みながら歩いた方が安全であった。最初のガレを通過して上部のガレは道幅が広く積雪があっても比較的安全に通過できた。

 これで本日の危険地帯は通過し終わったので少なくとも軽ピッケルはデポすることにしてハイマツの中へ隠した。軽アイゼンも以降は出番は無いかもしれないが、冷乗越より先は柏原新道経由で上がってきた登山者が合流し、多くの登山者に踏まれて凍った雪が連続する区間があるかもしれないので、軽アイゼンはここで脱ぐが山頂まで持っていくことにした。結果的には使うことは無く、逆にアイゼンを山頂に忘れて取りに戻って時間も体力も無駄にしてしまったので、ここでアイゼンもデポした方が良かったのかも知れない。

 冷乗越に出ると西寄りの風が吹き付けるが予報通りそれほど強くない。ここで初めて立山、剱岳が見えるが先週よりは雪は付いたが思ったよりは白くない。まあ、ここで雪が無いのだから当然かな。冷乗越からの下りは踏まれた雪が凍結して滑りやすいので、雪が無い場所やまだ踏まれていない雪の上を選んで足を置いた。

 冷池はさすがに氷っていて、営業を終えた冷池山荘は全ての窓、ドアは雪囲いされて玄関前の庇の下には雪の重みを支える柱群がまるで通行止めの柵のようになっていた。こんな時期に来たのは初めてだから初めて見る光景だった。

 当然だがテント場は空っぽ。全く雪は無かった。ここからしばらくは登山道は稜線東側に移るが、もしかしたらこちらには吹き溜まった雪があるかと思いきや、これまで同様に全く雪が無かった。ただし地面は凍っていてカモシカの蹄がしっかりと残っていた。帰りには凍った土が溶けかけて湿っていたが、もう少し気温が上がると泥沼状態だ。

 登山道が稜線西側に移ると同時に森林限界を突破。布引山までの前方には人影皆無。ジグザグの急登は南斜面なので雪は皆無。傾斜が緩んで布引山山頂に到着するが、ここから見る鹿島槍山頂にもほとんど雪は見られない。

 布引山から鹿島槍ヶ岳の間の稜線はぱっと見では雪は無いように見えるが、実際に歩いてみると登山道上だけ僅かに雪が残っている区間がそれなりにあった。登山道が周囲より僅かに凹んでいて日当たりが悪いからであろう。雪は固く締まって乗っても沈まないが、見た目よりも滑りやすくできるだけ雪を避けて歩いた。雪の上には足跡があることはあるが、それらの人が歩いた時には既に雪が締まっていたようで、大きく沈んだ足跡は無かった。

 最後の急登を登り切って無人の鹿島槍ヶ岳山頂(南峰)に到着。山頂標識のある山頂中央部のみ雪が残るが東西の両端には雪は皆無だった。北峰へと下る雪の上には足跡は無く、山頂から北峰へ続く稜線を見下ろしても足跡は無かった。この時期に南峰から北峰に向かう場合、水平移動に変わる尾根に降り立つ直前の岩場が曲者で、ここに半端な雪が乗っているとアイゼンが効きにくいので安全のために下りにはロープが必要であろう。どうせならもっと雪が乗った方が通過は容易であり、この時期に突入する人がいないのも当然だ。

 今日は風が弱いことが影響しているのか、初冬としては空気の透明度はイマイチで奥日光や尾瀬の山々が辛うじて見える程度で、デジカメの液晶画面では判別できないほど薄くなっていた。また、八ヶ岳や富士山、南アルプスも霞んでしまっていた。でも近場の北アルプスの山は問題なく見えており、一番白いエリアは先週末と同じく裏銀座と薬師岳であった。白馬岳は先週よりは白くなっているがまだまだ地面の黒さが目立っていた。頚城山塊は全く雪の白さは無し。志賀高原も白いものは一切見えなかった。

 休憩を兼ねて山頂には1時間ほど滞在して昼寝(朝寝?)もしたが、他に登山者が上がってくることは無かった。鹿島槍山頂で到着から出発まで無人のままだったことは初めてだが、この時期は夏山シーズンではないので珍しいことではないかもしれない。下山開始直前でも肉眼で人間が判別できる範囲の県境稜線には人影は無かった。

 下山開始して数分後、山頂での昼寝後に軽アイゼンをザックに入れた記憶がないことが発覚。下りで軽アイゼンが無いのは大きなリスクであり、置き忘れた場所もはっきりしているのでザックをデポして空身で山頂に戻った。昼寝前に滞在した南向きの岩場に軽アイゼンを発見したが、収納袋の色が岩とそっくりでありぱっと見でアイゼンを発見できなかったときには焦った。軽アイゼンを回収して下ったのはいいが、ザックをデポした場所が思ったよりも下であり、もしかしたらザックを見落としたのではないかと登り直したりして余計な時間と体力を使ってしまった。ザックをデポした場所は傾斜が緩み始める場所であった。

 無人の稜線を下り続け、初めての登山者とすれ違ったのは森林限界を割る直前のハイマツ帯であった。短い距離で2人連続で上がってきて先頭の男性はザックにピッケルが刺さっていた。ということは私と同じ赤岩尾根経由であろうか。登山道が稜線東に移ると男女のペアとすれ違い、冷池山荘から最低鞍部への下りで本日最後の男性とすれ違い、計5人であった。

 冷乗越に登り返して赤岩尾根に入ると雪の上には私の足跡以外に新しい足跡あり。ハイマツの中から軽ピッケルを回収し、ガレのトラバース手前で軽アイゼンを装着して濃くなったトレースを下っていく。2つのガレを通過してもまだ雪が付いた細い尾根が続くので、登山道が尾根南側に移って雪が一時的に消えるまでは軽アイゼンを付けたまま歩いた。

 軽アイゼンを脱いだ後にもまだ雪が乗った短い区間が登場し、下りは登りより滑りやすいので注意して通過。標高2100m付近以下でやっとほぼ雪が消えて歩きやすくなった。高千穂平の標識がある2045m峰を通過して急激に高度を下げていくが、徐々に気温が上がって暑さを感じるほどになったので扇で扇ぎながら歩いた。扇を使うのも今シーズンは今回が最後かな。

 西俣出合の林道終点の道端には1株だけまだコゴメグサの花が咲いていたのには驚いた。もう周囲の草は冬枯れ状態なのになぁ。今回見た花はこれだけであった。

 林道脇の水力発電用の取水堰に車が入っていて、堰の横で何やら工事中であった。この影響で林道入口のゲートは開いていて、番号鍵のかかった鎖で車止めされていた。左岸側駐車場は私の車を含めて3台、右岸側には1台の車が駐車中で、これが全て登山者の車だった場合、赤岩尾根を登った登山者は私の他に少なくとも3人いたことになり、すれ違った5人の半分以上が柏原新道ではなく赤岩尾根経由で登ったことになる。一般的に鹿島槍は柏原新道経由で登られるので、こんなことがあり得るのだろうか?

 登山口に下りても稜線はすっきりと晴れのままで、大町市街地付近からも稜線が良く見えていた。

 

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